木々ラボについて

地域の森の現状

 今、日本中の多くの森で、戦後に植林されたスギ・ヒノキが成長し、伐る時を迎えています。スギ・ヒノキは概ね50~60年で伐採し、建築用材とするのが最も効率的だと言われています。それ以上に成長が進んで太くなった木(大径木)も利用はできますが、乾燥や加工などに手間がかかりニーズが多いとは言えません。まさに今が日本の木の伐り時、使い時。森ではどんどん伐採を進めて木材を生産し、まちでは地域材をどんどん活用して、快適で温暖化防止にもつながる「木の建物」を増やしていこう、という時代です。
 そして同時に、木を伐採した跡地には新たな苗木を植え、次世代の森を育てる必要があります。森を育てるには植林後の保育・維持管理の作業も必要です。次の世代に豊かな森を残し、50年後に木材として利用できる木を育てていくことは、前の世代から豊かな森林資源を受継いだ、この時代を生きる私たちの責任とも言えます。

大きく育ち道際にまで迫ったスギ林

 しかし伐採跡地の中には、無関心や資金不足などの理由により、植林がされずに放置される場所や、植林したもののその後の保育・維持管理がされないことがあります。新たな苗木を植えないとススキやササなどの背の高い草が生い茂る荒れ地となり、もとのような森には戻りません。また植林後の保育・維持管理作業がされないと、小さな苗木は生い茂る草に負けて消失してしまいします。荒れ地には、森がもつ災害防止や水源かん養、温暖化防止など、自然環境を守るはたらきがありません。伐採地で新しい森づくりがされないと、私たちの安全な暮らしが脅かされたり、多様な生物、豊かな自然が失われていくことになります。

伐採後、放置され荒れ地となってゆく

私たちにできること

 伐採跡地の新たな植林(再造林)が進まない理由には、ライフスタイルの変化や木材価格の低迷、人件費の増大などの様々な社会的背景があります。以前たくさんの植林が行われた終戦後の時代には、多くの人々が農山村の資源とともに暮らしており、誰もが木を植えることで子や孫に財産が残せると考えていました。しかし現在は森と関わることなく都市部で暮らす人が多く、外国産材の輸入等により木材価格が低迷し、地域の林業は補助金なしには立ち行かず、森林所有者は新たな植林・保育をする資金を得ることが困難になっています。

荒れ地を森に再生する活動

 「次世代のための森づくり」は森林所有者だけでなく、この時代に生きる私たちがみんなで取組む必要があります。多くの人に森や木に関心を持っていただき、森づくり活動に参加したり、地域材を活用したり、そのための資金を循環させるために、ひとりひとりはもちろん、企業や団体による大きな力が必要です。

あなたにできること

森によって守られる〈森のもつ機能〉

災害防止

森は、地中にはりめぐらされた樹木の根によって、土壌を斜面につなぎ止めています。また土壌の表面をおおう落葉落枝や下草等によって、降雨などによる土壌の流出を抑え、土砂崩れなどの土砂災害の未然防止に力を発揮します。

水源かん養

森の土壌は有機物や生物によってスポンジのような構造になっており、雨水を地中に浸透させる能力が裸地の約3 倍もあります。雨水を充分土壌中に蓄えてゆっくりと河川に流すことで、洪水や渇水を緩和し、水質を浄化しています。

快適環境の形成

森には、蒸発散作用によって夏の気温を低下させる等、気温の変化を緩和するはたらきがあります。また、樹冠による塵埃(じんあい)や汚染物質の吸収機能、樹林帯による防音効果などもあり、快適な生活環境の形成に貢献しています。

温暖化防止

森はCO2を吸収して地球温暖化を抑えるはたらきを持っています。私たちは、暮らしの中で排出するCO2を抑制できても、「ゼロ」にすることはできません。森づくりにより二酸化炭素の吸収効果を高めることが重要です。

生物多様性

日本の森には、約80種の鳥類、3,400種の植物が生息し、その土地の環境に応じて複雑で多様な生態系を形成しています。森の保全は、遺伝子や生物種、生態系など生物多様性の保全につながります。

木材の生産

森で生産される木材は、古来より建築用材やエネルギーとして利用されてきました。木材は半永久的に繰返し生産ができる循環型資源で、環境にやさしい未来につながる資源としても注目されています。

健康・ストレス解消

森が安らぎや癒しの効果を持ち、樹木が発散する物質が健康増進に効果がある実証的なデータが蓄積されています。森林浴や森での活動は、気分転換やストレス解消につながることが期待できます。

森の恵み・文化

森林は、きのこ、木の実、山菜、野生動物など豊かな食物をもたらしてくれます。木材や森の恵み、景観は私たちの暮らしに深く根付いており、生活文化や伝統文化を形成してきた源といえます。